HPとAppleの比較

Hewlett-Packard(HP)がパーソナルコンピュータ事業のスピンオフ(分離・独立)を検討すると発表しました。発表内容(英語原文)はこちら。また、英国のソフトウェアメーカー、オートノミーに対して買収したいと提案しているとのことです。

各メディアの記事を読んでみて、内容をかいつまんで言うと、パソコン事業は儲からないので事業経営から手を引くということみたいですね。そして、オートノミーの買収などにより今後成長が見込まれ、競合がいなくて儲かりそうなソフトウェア事業に力を注いでいくということのようです。

世界のパソコン出荷台数がトップで、世界シェアの約20%を有しているパソコン部門を分離するとは驚きです。よほど業績が悪かったのだろうと思い、業績を調べてみました。

HPの業績(2010年)

HPの投資家向けのページはこちら

以下、2010の年間業績資料より抜粋。

売上高 1,260億ドル
売上高総利益 299億ドル
売上高総利益率 23.8%
営業利益 115億ドル
営業利益率 9.1%
部門 売上高 営業利益率
サービス  349億ドル 16.1%
エンタープライズ、ストレージ、サーバー 187億ドル 12.9%
ソフトウェア 36億ドル 21.2%
パーソナルシステム 407億ドル 5.0%
イメージング、プリンター 257億ドル 17.1%
金融サービス 30億ドル 9.2%

パソコン部門の利益率が全部門の中で一番低いですね。しかし、一番売上をあげている部門でもあります。細かい数字がでていないので何の費用が大きいのかわかりませんが、製造にかかる材料費や人件費、販売にかかる広告費や人件費などの事業活動の本質にかかる合計費用が大きいと考えられます。事業全体の切り離しを検討するということは、一部の費用が突出して悪くなっていて、例えばレイオフなどで改善できるというわけでなく、パソコン事業自体がそういうもので収益性が低く、現経営陣が経営している限りは収益性が改善する見込みはないと判断されたのでしょう。

確かに、パソコンも昔に比べると安くなってきていて、あまり儲からなさそうなイメージがあります。日本国内の大手メーカーはテレビと融合させたり3Dで映像を見ることができるなどの付加価値をつけて高い値段で売っています。

では、Appleはどうでしょうか。先日ニュースになりましたが、現在、Appleはアメリカ合衆国よりもキャッシュを保有しているそうです。(現金残高762億ドル)現金をたくさん持っているということは、きっと儲かっていて、利益率も高そうです。


Appleの業績(2010年)

Appleの投資家向けのページはこちら

以下、2010の年間業績資料より抜粋。

売上高 652億ドル
売上高総利益 257億ドル
売上総利益率 39.4%
営業利益 184億ドル
営業利益率 28.2%

会社全体でみると売上高はHPの半分ですが、営業利益はAppleの方が多く、営業利益率は3倍以上でなんと約30%です。もう少し詳しく製品別に見てみます。

製品 売上高
デスクトップ 62億ドル
ノート 113億ドル
iPod 83億ドル
その他の音楽関連 49億ドル
iPhone関連 252億ドル
iPad関連 50億ドル
周辺機器 18億ドル
ソフトウェア、サービス 26億ドル

利益に関する数字がないので収益性はわかりませんが、売上高でみると、Appleもパソコン、特にデスクトップは主力製品ではなくて、iPhoneが主力製品ですね。企業全体の営業利益が184億ドルという額から推測すると、その利益に一番貢献しているのがiPhone関連の事業かもしれません。驚きなのが、iPad関連事業がすでに50億ドルも売上があって、デスクトップとほぼ同じだということです。iPadがデスクトップより販売単価が安いこと、またiPad事業を開始してからの期間を考えると驚異的です。

この数字を見る限り、もしかすると、Appleもパソコン事業から撤退するかもしれませんね(涙)OS X Lionについて、批判的な意見をちょくちょく目にしますが、Appleがすねてパソコン作るのをやめると言い出さないように暖かく見守っていきましょう。